西東 たまき
(更新)
英語の文章を見ると「a/an」や「the」という単語があちこちに見つかりますね。
文法用語では、これらを「冠詞」と呼びます。冠(かんむり)のように、名詞の頭に付けて使われるものです。
冠詞は英語のほか、多くのヨーロッパ言語で必要不可欠な要素ですが、日本語にはこれに相当するものがありません。
わずか数文字の小さな単語ですが、冠詞を間違うと違和感が生じるばかりでなく、意味が正しく伝わらなかったりするほど影響力がある単語でもあります。
当記事では、冠詞にはどのような役割があるのか、どのようなときに使うのか、そして不定冠詞「a/an」と定冠詞「the」の使い分け方など、英語の冠詞について詳しくお伝えしていきます!
対象としているモノ(名詞)が特定のものなのか、不特定のものなのかを示すために使うのが冠詞です。
英語の冠詞には a/an と the の3種類あり、a と an は「不定冠詞」、the は「定冠詞」と呼ばれ、使い方も異なります。
それではさっそくそれぞれの違いを見ていきましょう。
冠詞の違いを分かりやすくまとめた表がこちらです。
不定冠詞 a/an | 定冠詞 the |
「ある、1つの」の意味になり、日本語ではわざわざ表現しないことが多い | 日本語では「その」の意味になることが多い |
不特定のものを指す | 特定のものを指す |
可算名詞につく | 可算名詞にも不可算名詞にもつく |
単数名詞につく | 単数名詞にも複数名詞にもつく |
「私は猫を飼っています」
「私はその猫を飼っています」
「彼は学生です」
「彼が、その学生です」
「不定冠詞」とは、上の表にもあるように a と an のことです。ここでは不定冠詞の使い方と、a/an の使い分け方を見ていきましょう。
不定冠詞は「ある、1つの」という意味なので、どれということでもない不特定の可算名詞(数えられる名詞)の単数形に対して使うのがポイントです。
「映画」
「携帯電話」
「1切れのチーズ」
「オムレツを作りました」
「毛布いりますか?」
「ここに疑問が生じます」
表にあるように、a と an は機能的には同じものです。どちらを使うかは、次に来る単語の「音」次第というシンプルなルールで決まります。
母音(aeiouのこと)から始まる単語には an を、そうでなければすべて a を使うのです。
「アドバイザー」
「国際機関」
「都会の住人」
「NBAの選手」
「Xboxコントローラー」
「公共料金請求書」
定冠詞 the は、日本語にするときはよく「その」と訳されることからもわかるように、文脈や状況などから、相手が何を指しているかわかるときに用いるというのが基本的な使い方です。
具体的に見ていきましょう。
話の中ですでに触れているので、何を指しているのか明確なモノにつけます。
「今、英語の本を読んでいます。その本は、10年前にインドで買ったんですよ」
「この辺にフレンチレストランがあったんですけどねえ」
「そのレストランってここですか?」
話し相手との共通認識があって何を指しているのかが特定できるならば、話に登場していなくても the を使います。
例えば、外出の際ドアにカギを掛けたか確認したいとしましょう。どこのドアを指しているのかは状況でわかるので the door となります。
「ドアにカギは掛けましたか?」
「彼女に電話しないといけません。番号は分かっています」
世界に一つしか存在しないものには the を使います。
the sun(太陽)や the moon(月) はもちろん、他にもいろいろありますね。
「空」
「赤道」
「同じ話」
「私が信頼する唯一の人」
「もっとも安いチケット」
以下のようなケースは the をつけるのが「決まり」になっています。そういうものだと思って、そのまま覚えましょう。
・楽器
「ギターは弾けますか?」
「インフルエンザ/はしかにかかったみたいです」
・「~家」
「彼女はハプスブルク家の子孫ですか?」
・一部の国名
「フィリピン」
「アメリカ合衆国」
「オランダ」
・年代
「1950年代においては普通のことでした」
・トイレ
「お手洗いはどこですか?」
よく使う会話フレーズで、the の有無によって意味がすっかり変わってしまうものをご紹介しておきましょう。
人に「少しお時間ありますか?」と聞きたい場面って結構あるものです。そんなときは Do you have time? と言えば、「空いた時間があるかないか」を答えてくれるでしょう。
しかし、Do you have the time? と聞いたら、現在の時刻を教えてくれるでしょう。the が入ると「今、何時ですか?」と聞いていることになるからです。
「お時間ありますか?」
「いま、何時ですか?」
the の発音には「ザ」と「ジ」があり、どちらを使うべきか悩んでいる方もいるかもしれません。
定冠詞 the の発音の判別方法と使い分け方についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
外国語には多く見られるけど日本語にはない「冠詞」。
英語を学ぶ上でとても基本的かつ重要な点でありながら、どうも難しいと感じてしまうやっかいなものでもあります。
英語を母国語とする人は、あらためて意識することもなく自然に身につけ、使いこなしています。
私たちが使い方をマスターするには、記事で挙げた基本事項を頭に入れた上で、冠詞の使われ方を意識しながら英文を読むこと。「感覚」を掴むのが一番の近道になります!